目を逸らしてうなずいたわたしは、意味もなく席を立つ。

わたしの挙動不審ぶりに神村くんは楽しそうに笑っていた。


トイレでも行っておこうかな.

なんだかお気に入りのリップを塗りたい気分だ。


窓から射しこむ太陽が、今日もきらめきを連れてきている。



「…あれ、」



ふと黒板の前を通った時、教卓に可愛いキャラクターの手帳が置いてあることに気付く。

これ、沙雪先生がいつも持ってるやつだ。

…分かんないけど、1時間目は沙雪先生の授業じゃないし、忘れて行ったのかな。


授業まではあと10分ないくらい。職員室に行って帰ってくるのは余裕だろう。


(届けに行った方が、いいよね)



困っているかもしれないと思い、迷わず手帳を持って教室を出た。