「綺星、お前には失望した。頭脳はまだマシとはいえ、葉月以下だったとは」
綺星くんのお家で会った時以上の凄み。
心の底から軽蔑しているその視線は、氷のよう。
「今まで何のためにお前に時間を割いてきたと思う?私のように社会的な安定と成功を得て生きていくためだ。恋愛にうつつを抜かすよう育てた覚えはない!!!」
響き渡る低音。叫びに似た声の迫力。
声を張り上げた綺星くんのお父さまは、肩で息をしていた。
綺星くんは下を向き、こぶしをぎゅっと握っている。
…いろんな感情と向き合って、闘っているのだろう。親の言う通りにして何もかも諦めてきた自分が、初めて本音を言った変化。
「……っ、」
――…だからわたしは、そっと彼の手に触れて微笑んだ。
わたしが言えることは何もないけれど。ひとりじゃないと伝えたい気持ちは、どうか届いてほしい。