もっと告白の場面は選べたはずとか 

今はまだ言うべきじゃなかったとか 


いろんな想いが駆け巡るくせに、溢れた2文字がすべてだった。



後々のことも考えず、今言ってどうすると思う自分と

……言えた、と思う自分と。


それでも綺星くんの想いを聞きたかった。



“…好き。――…菜咲のこと、好きだ…っ”



その言葉が、確かにわたしの支えになっていたから。


だから 




――…「ごめん」




困ったように微笑んだ彼を見た時

きらめいていた世界から、色が消えて。



(あぁ、…ほんとなんだ)



彼は本当にもうすぐいなくなるのだと、分かってしまった。



「…綺星くん、…すき、だった?」



――…わたしのこと。



「うん」



わたしは、泣きそうな顔で微笑む彼に、そんな顔をさせたいわけじゃなかった。

触れた手が離れて、指先のつめたさをいやというほど実感させる。




「好き、だった」




どれだけ手を伸ばしても、もう彼は触れてはくれない。