春の日差しが水たまりをもきらめかせ、一日のはじまりを華やかに告げている。

寮の玄関をほうきで掃いていると、目の前に咲く桜の木から、花びらがひらりと舞い落ちた。


「すみませーん、私のルームメイトの園枝菜咲ちゃんって見ませ――…、」

「え?」

「…え?……って菜咲っ!?」

「あ、華乃ちゃんおはよう!」



園枝菜咲(そのえだなさ)、私立幸星(こうせい)学園高校の今日から2年生。

声を掛けられ振り向くと、一番の仲良しでルームメイトでもある村雨華乃(むらさめかの)ちゃんが驚いて目を見開いている。



「いや、おはようなんだけど!起きたらいないし掃除の人の格好して働いてるし、どういうこと!?」

「今日ね、掃除の職員さん一人休みなんだって。たまたま早起きしたから手伝ってて…朝ごはんはちゃんと食べたよ!」



新学期にわくわくして一番に朝ごはんを食べ終わると

いつも3人いる掃除の職員さんが、2人しかいないことに気付いた。


声をかけると風邪をひいてお休みした人がいるとのことで、手伝っていたのだ。