「あ、ちょうちょ発見!」
そう叫ぶと同時に、ヴィンセント様は大きく瞳を見開くと、堂々と上空を指さした。
その指の指す方角には、パタパタと空を舞う一匹の蝶々。
すると、ヴィンセント様は嬉しそうに笑いながら蝶々を追いかけ始めた。
……幻聴が聞こえてきたかと思えば、幻覚まで見え始めたのだろうか。
「待て! ヴィンセント! まだ挨拶は済んでいないぞ!」
ヴィンセント様に次いで馬車から降りて来たのは公爵様だろう。
せっかく念願の公爵様に会えたという感動を感じる間もなく、私の視線はヴィンセント様の奇怪な行動へと向いてしまう。
残念ながら、これは幻覚ではないらしい。
公爵様の制止も虚しく、彼は蝶を追いかけて私達の目の前でクルクルと走り回っている。
そんなヴィンセント様の姿に、私達家族は呆気に取られたまま固まった。
暫くして「ははは。元気が良くて何よりですね」と、お父様が必死にフォローしようとしていたけど、もうすぐ二十歳になる青年を見て言う感想ではない。
その時、再び私の頭の中に先程と同じイケボイスが響いてきた。
(挨拶なんて必要ない。どうせすぐ断られて終わりだ)
……何なのこれ?
目の前のヴィンセント様の行動も不可解だけど、それよりもこの謎の声の方が気になってしょうがない。
周りを見渡しても、私達以外に誰かいる訳でもないし。
それに内容的にも、やはりヴィンセント様が声の発生源だとしか思えない。
まさかとは思うけど――。
すると、公爵様が申し訳なさそうな様子で私達に声を掛けてきた。
そう叫ぶと同時に、ヴィンセント様は大きく瞳を見開くと、堂々と上空を指さした。
その指の指す方角には、パタパタと空を舞う一匹の蝶々。
すると、ヴィンセント様は嬉しそうに笑いながら蝶々を追いかけ始めた。
……幻聴が聞こえてきたかと思えば、幻覚まで見え始めたのだろうか。
「待て! ヴィンセント! まだ挨拶は済んでいないぞ!」
ヴィンセント様に次いで馬車から降りて来たのは公爵様だろう。
せっかく念願の公爵様に会えたという感動を感じる間もなく、私の視線はヴィンセント様の奇怪な行動へと向いてしまう。
残念ながら、これは幻覚ではないらしい。
公爵様の制止も虚しく、彼は蝶を追いかけて私達の目の前でクルクルと走り回っている。
そんなヴィンセント様の姿に、私達家族は呆気に取られたまま固まった。
暫くして「ははは。元気が良くて何よりですね」と、お父様が必死にフォローしようとしていたけど、もうすぐ二十歳になる青年を見て言う感想ではない。
その時、再び私の頭の中に先程と同じイケボイスが響いてきた。
(挨拶なんて必要ない。どうせすぐ断られて終わりだ)
……何なのこれ?
目の前のヴィンセント様の行動も不可解だけど、それよりもこの謎の声の方が気になってしょうがない。
周りを見渡しても、私達以外に誰かいる訳でもないし。
それに内容的にも、やはりヴィンセント様が声の発生源だとしか思えない。
まさかとは思うけど――。
すると、公爵様が申し訳なさそうな様子で私達に声を掛けてきた。