「でも父上! 私はついに真実の愛を見つけたのです! 真実の愛さえあれば、きっと何もかもうまくいきます! この国もきっと愛の力で――」
「ほう。真実の愛とは、実に素晴らしいではないか。……聞いた話によると、その愛さえあれば、他に何もいらないと……?」
「は……はい! そうです! 彼女さえいてくれるのなら僕は――」
「ではカロル第一王子。今この場をもって、お前の王位継承権を剥奪する」
「……はい?」
「どうした? 真実の愛さえあれば、こんなもの不要なのだろう?」
「そ……それは……! でも……!」
「お前の様に後先考えずに婚約破棄する男にこの国を任せるつもりはない。幸いな事に息子はお前一人ではないからな。何の問題もない。それよりも、我が国がアーデル侯爵家によりどれだけ支えられているか知りもせずに勝手な事を……はあ。どう詫びれば良いのやら……いっその事カロルを国外追放するか……?」
「……父上?……今、なんと?」

 国王陛下がボソリと呟いた冷たい一言に王太子殿下……いや、カロル王子はサーっと顔を青く染めた。

「とりあえず頭が痛いから私はもう帰る。とても祝えるような心境じゃないからな」
「そんな……父上……! お待ちください! 父上ぇぇ!!」

 ガックリと肩を落として会場内から去って行く国王陛下を、カロル王子が必死に追いかけていく。
 抜け殻の様になってしまっているクリスティーヌをこの場に残して。ねえ、この子あとでちゃんと回収してあげてよ……?

「レイナ、俺達も帰ろう。だが、その前にその手の傷をなんとかしないとな。どこか部屋を貸してもらおう」
「あ……はい」

 ヴィンセント様に手を取られ、私達もすっかり騒がしくなった会場を後にした。