私は彼女達の目の前で足を止めると、わざと横柄な態度を見せながら腕を組む。
 更には呆れる様に大きく溜息を吐くと、軽蔑の眼差しを向けて口を開いた。

「ねえ、あなた達。さっきから心の声がダダ漏れになってるんじゃない?」
「……は?」

 私の言葉に、令嬢達は呆気に取られた様に立ち尽くしている。
 何の返答も得られないようなので、私は言葉を続けた。

「別に心の中でなら何をどう思っていようと勝手だけど、それが口に出るようなら気を付けた方がいいわ。せっかく隠れているあなた達の心の醜さまで(おもて)に出てきちゃってるわよ」
「な……!? その言葉、そっくりそのままお返しするわよ! あなただってお金目当てで婚約したくせに! 心が醜いのはあなたの方じゃない!」
「確かに、洪水の被害については公爵様から多大な支援を頂いたわ。でもそれと私達の婚約は全く関係ない事よ。公爵様は気が進まなければ婚約解消しても良いと提言してくれているわ」

 私の説明を聞いた令嬢は小馬鹿にする様に鼻で笑う。

「ふっ……それはどうかしら? 口だけなら何とでも言えるものね」
「そうね。それならあなたはその減らない口をなんとかした方が良いんじゃない? あなたの言葉を聞いていると、なんだか不快すぎて首をぎゅっと絞めて黙らせたくなるわ」

 ニッコリと微笑みながら口元で両手の拳をギュッと握って見せると、彼女は血の気が引く様に顔を青く染め上げ、恐怖に顔を歪めた。

「は……? 何を……?」

 あら、私まで心の声が漏れてしまったみたいだわ。
 心の声って意外と簡単に出てしまうのね。