「……私がクリスティーヌさんに嫌がらせをしていたと?」
「そうです! エミリア様に虐められていた事、全てカロル様にお話しました!」
「私があなたに何をしたというの?」
「とぼけないでください! 私のお父様が借金をしてまで用意してくれた唯一のドレスをズタズタに切り裂き、お母様の形見であるネックレスもあなたが奪ったじゃありませんか! 他にも数々の暴力や暴言……本当に私……辛くて……うっ……うう」

 突如、涙を流し手で顔を覆うクリスティーヌに王太子殿下が駆け寄り、弱々しく震える肩を抱き寄せる。

「もういい。クリスティーヌ……。君は十分頑張った。あとは僕に任せるんだ」
「カロル様……」

 熱く見つめ合う二人にエミリア様は氷の様に冷めたい視線を向ける。

「……どれも身に覚えのない事です」
「そんな……! 私はこんなに傷付いているのに……あなたは全てお忘れになったというのですか!?」
「忘れるもなにも、そんな事をしていないのだから――」
「いい加減にしろ! エミリア、君がどう弁明しようがこちらには証人がいる。無駄なあがきはやめるんだな」
「……」

 声を張り上げて威圧する王太子殿下に、エミリア様は諦めた様子で小さく溜息を吐く。
 すると、王太子殿下は切なげに眉を寄せ、クリスティーヌをギュッと抱きしめた。

「君の報復を恐れる事なく、クリスティーヌは勇気を出して真実を話してくれた。そんな彼女の儚くも美しく思える姿に僕は感動したんだ。だから僕もクリスティーヌを守りたいと……そう強く思ったんだ。そして彼女と共に過ごすうちに、愛しい気持ちが抑えきれなくなった。そう……僕は真実の愛を見つけたんだ」