目は口ほどに物を言うと言いますが 〜筒抜け騎士様は今日も元気に業務(ストーカー)に励みます〜


 「レオン様は『出来損ないの忌み子』じゃないです。私は、」


 ――ビクッ。

 何を言われたのか、まるで理解できなかった。
 驚きで動きが止まって、アメリアが話し続けているのに何も頭に入ってこない。

 今、彼女は、何と口にした?
 どうして誰も知らないはずの呼び名を知っている?

 かあっと頭に血が上る感覚がした。
 気づいたときには立ち上がって、ばっと掴んだ目の前のグラスの中身を彼女の頭にかけていた。


 「どうしてその呼び名を知っているんだ!」
 「ッ、レオン様、」
 「近寄るな、このバケモノ!」


 そこまで言って、ハッと我に返る。
 ポタポタと、綺麗な金髪から雫が零れ落ちるのがひどくスローモーションに見えた。慌てふためいたメイドの声が耳に入ってくる。

 戸惑いを隠せない彼女の瞳は揺れていた。
 その色は絶望に染まっている。

 取り返しのつかないことをした。
 そう理解した手からグラスがするりと落ちて、パリンと音を立てて割れてしまった。

 貴女だけには知られたくなかった。
 このグラスのように、砕け散った自分たちの関係は元に戻れない。

 アメリアを傷つけたという事実に自分勝手に傷ついて、大人びたはずの十歳の少年は彼女の全てを失ったのだとすぐに悟った。

 綺麗な思い出にするなんて、嘘でも言えなかった。唯一無二ともいえる存在を忘れることなんて、簡単にできやしない。

 だけど、無理だった。
 アメリアを傷つけておいて、平気な顔をして横に並んでいられるほど、彼は鈍感ではなかった。

 こんな自分に彼女を幸せにする資格なんてない。
 唇を噛み締めた彼にできることは、後日、婚約破棄の連絡を伯爵家に送ることだけだった。

 その手紙を受け取った日からアメリアはベールを被って過ごすようになり、明るい笑顔は滅多に見られなくなってしまった。