初めて彼と顔を合わせたのは、アメリアが五歳になる誕生日だった。
将来を共にする婚約者を祝おうと遠路はるばる伯爵家までやってきた第三皇子は少し緊張した面持ちで頬を赤く染め、それでも微笑みを絶やさずに恭しくアメリアの手を取った。
「はじめまして、アメリア嬢。そして、お誕生日おめでとう。貴女が産まれた今日という日にお会いできたことを嬉しく思います」
コリンズ家自慢の庭園の花々がさらさらと清かな風に揺れる。それはまるで二人の出会いを祝福しているかのよう。
顔合わせの日程が決まってから今日まで、夢に見るほど何度も繰り返し作法を練習してきたアメリアは失敗を許さない。ドキドキと高鳴る心臓の音を悟られないよう、綺麗な微笑を浮かべて頭を垂れた。
「はじめまして、殿下にお会いできることを心待ちにしておりました。今日はお越しくださりありがとうございます」
全ての負の感情を隠し通し、マナー講師も感涙するほど完璧に振る舞ってみせたアメリアに降ってきたのは、控えめで上品な笑い声。
「ふふ、アメリア嬢は噂通りの方なんだね」
「……?」
「貴女が私の婚約者でよかったということだよ」
「……もったいないお言葉です」
曖昧に誤魔化されて理解が追いつかないアメリアは、素直に褒め言葉と受け取って再び頭を下げた。
