いつも盾になってくれるエマもアマンダも今日はいない。最近は二人が睨みを利かせているから忘れていたけれど、アメリアが嫌われ者であることはいつだって変わらない。
傷つくことに慣れたと思っていても、心は素直だ。言葉のナイフは悪意を持ってアメリアの心にグサグサと突き刺さり、背中をじんわりと嫌な汗が伝った。
「ほんと、バケモノみたいよね」
そんな一言が耳に入った瞬間、アメリアはベールを被るきっかけになった出来事を思い出した。
☆
――それは、遠い昔の記憶。
アメリアがこの国の第三皇子の婚約者だった頃に話は遡る。
先祖代々コリンズ家は宰相を務めてきた、堅実で優秀な家系だった。皇帝陛下の右腕として信頼も厚かったため、アメリアはこの世に生を受けるとすぐに二歳上の第三皇子の婚約者に選ばれた。
物心つく前に決められた運命。アメリアはそれを窮屈に思うことなく、未来の夫のために厳しい妃教育も乗り越えていた。
