「アメリア! いつか必ず貴女を……!」

 興奮しきった身体を鎮めようとルーカスが夜な夜な剣を振って汗を流している頃、同じようになかなか眠りにつくことができずにいたアメリアは、自室の窓から三日月を眺めていた。


 「はぁ……」


 重たいため息。まるで、恋煩い。

 ベール越しに見た彼のことを思い出すだけで、胸の奥が震えて、焦がれてしまう。

 夕飯も喉を通らなくて、せっかくシェフが美味しいご飯を作ってくれたのにほとんど残すことになってしまった。

 苦しい。心臓が痛い。


 (だって、私じゃ駄目だわ)

 嫌われ者のアメリアが想いを寄せても、それはきっと彼にとっては迷惑。
 彼の築き上げた人気に傷をつけてしまうから。

 彼の重荷にはなりたくない。


 (もう、会わない方がいいわ)

 会わなければ、きっと忘れられる。
 そんな決意とは裏腹に、つーっと勝手に涙が溢れてくる。

 するとその気配を察したのか、幼い頃からの友人・ハスキーのハリーが近寄ってきて心配そうにアメリアの手を舐める。

 小さく微笑んだアメリアは「大丈夫よ」と頭を撫でて、共にベッドに戻った。


 (目が覚める頃には、この痛みが消えていますように)

 そんなことを願いながら、アメリアは瞳を閉じた。