もう駄目かもしれない。
アメリアはギュッとベールの下で目を瞑った。
――ふわっ。
すると、不意に体が宙に浮いている感覚がして、凄まじい音を立てて馬車が通り過ぎていく。
「もう大丈夫ですよ」
落ち着いた低い声で囁かれて、恐る恐るアメリアは目を開けた。
至近距離にルーカスの顔があって驚くと同時に、彼に抱え上げられていることに気がつく。
――無表情だ。感情のない冷酷な男だ。
さっき令嬢たちがそう噂するのを聞いたけれど、アメリアはそれは嘘だと思った。
だって、信じられない。
こんなに優しく、慈愛に満ちた瞳で綺麗に微笑んでいるひとが、冷酷だなんてありえない。
しかもその表情を向ける先が、多くの人が毛嫌いしているアメリアなんて尚更。
(騎士様は今何を考えているのかしら)
どうか向けられた感情が好意的なものでありますように。
そんな馬鹿げたことを願いながら、アメリアは彼に見惚れてしまった。
