誰よりも強い私が恋愛を知る話。

天堂side

思ったよりぐっすりと寝てしまった。

軽く仮眠をとって、羽栗が帰るタイミングで一緒に、、と思っていたが、なかなか起きられずに今に至る。

急いでいる様子だったので先に帰らせたが、やっぱり一人で帰るのは寂しい。

突然だが、俺は羽栗に惚れている。

みんなどこが可愛いのわからないというが、ほんとに馬鹿なのではないかと思う。

あんなにガラ悪そうな見た目に汚めの言葉遣いしててもなお、自分のことは『私』って呼ぶほんとに少しのギャップと言うやつが最高に可愛い。

話せば話すほど、羽栗のギャップと言うやつは出てくる。

だからこそ、毎日話しかけてても飽きない。

今日も『かわいい』って言ったら真っ赤になって照れていたし、そういう感じがほんとに可愛い。

もうこれは小説なんかでたまに見る愛おしいと言うやつなんではないかと疑ってしまう程だ。

いつも羽栗のことを考えながら帰る。

家では勉強をしなければならないので考えないようにしているが、最近は家でも羽栗のことを考える時間が増えてきてしまった気がする。


『…ぶん…じょうぶ』

やはり末期なのか。

もう近くにはいないはずの羽栗の声が、この角を曲がった先から聞こえてくる。

どうしたらこの末期な状況を変えられるのだろうか。



「は?お前、自分の立場わかってて言ってんのか?」


喧嘩か。

本当にガラの悪いタイプのやつの喧嘩だ。

それか、カツアゲか?

どっちにしろ、今出ていくと良くないことは確かだ。

巻き込まれては困る。

戻って遠回りでもするとするか。

「そっちこそ、私たち黒鷲に手出して何も無く帰れるとでも??」

ん?聞き覚えのある声だ。

戻りかけた足を止める。

さすがにないと思った。

いくら見た目がああでも、人は見かけによらないというものだから。

さすがにここにいるのは羽栗では無い。

そう思いながらも、ほんの僅かな不安から声のする方へ戻ってしまった。


あ、。

そこに居たのは、まぎれもなく羽栗本人だった。

そしてその羽栗は小さい子を捕まえている男相手に、一瞬で勝ってしまった。

強い。

きっとあれは、誰もが認める強さと言うやつなんだろう。

偶然、今日は調子がいいとかなのだろうか。

いや、違う。

本当の強さなんだ。

普通の人なら、ここで関わることをやめようと考えるのだと思う。

でも俺は、この強ささえも、美しいと思えた。

見惚れてしまったんだ。

だからいけなかった。

羽栗がこちらに向かって歩いてくることにも気づけなかった。

「なんで、、」

明らかに動揺した表情を浮かべる羽栗。

その横で羽栗のことをこっちゃんと呼ぶこいつはさっき羽栗に助けてもらったやつだ。

「…こちらの人違いだったようだ。気にしないでくれ。」

なんて切り出していいのか分からず、その場を去ることが最優先だと思った。

また明日、羽栗が話したいと思った時に聞こう。

そう決めて、足を急がせた。