拓斗がこちらに気づき、わたしと目が合った。
にっこり微笑んでくれる拓斗に、胸がキュンと鳴る。
ああ、かっこいい。
笑うとくしゃっとなる、拓斗の優しい顔が好き。
拓斗がひらひらと手を振ってくれたので、わたしも振り返す。
えへへ。なんかこういうの、幸せだなぁ。
「もう! 音寧なに教室で堂々といちゃついてんの。このバカップルめ」
怜ちゃんがわたしを軽く小突く。
バッ、バカップルって!
えっ、ただ手を振り合っていただけなのに。わたしたちってバカップルなの? と、真剣に考え込んでしまう。
「怜ちゃん、わたし拓斗といちゃついてるつもりはないんだけど……ごめんね?」
「ううん。あたしは、音寧が幸せそうだから別に良いんだけどさ。思う存分仲良くしなよ」
「あっ、ありがとう怜ちゃん」
「おーい、お前ら早く席に着けー」
怜ちゃんと話していると、1限目の数学担当の谷山先生が教室に入ってきた。
それと同時に、教室のあちこちに散らばっていたクラスメイトたちは皆、自分の席へと戻っていく。
わたしは、数学の教科書を出そうと机の中をゴソゴソ漁っていると。
……え。



