う……『ダメ?』って、超絶イケメンの拓斗に首を傾げて可愛くおねだりされたら……断れるわけがない。
「どっ、努力します」
わたしは拓斗の前に立つと、思いっきり背伸びをして、拓斗にキスをしようと試みる。
あっ、足がプルプルする。
「ああ、頑張って背伸びして俺にキスしようとしてくれてる音寧ちゃん……たまらない。可愛すぎる」
拓斗が口元を手でおさえる。
「ちょっ……! 口元を手で隠されたら、もし届いたとしてもキスできないじゃない!」
「ねぇ。いま動画撮っても良い? 一生懸命な音寧ちゃんを残しておきたくて」
「はい!? こっちは必死なのに……っ! 今そんなこと言う!?」
ああ……ダメだ。どれだけ頑張って背伸びしても、拓斗の唇には届きそうもない。
「ねぇ、拓斗。かがんで?」
「えー? やーだ。必死な音寧ちゃんを、もう少し見てたいもん」
もう、こういうときの拓斗ってほんと意地悪……!
傍から見たら、まだ数学の課題の途中だと言うのに、キスくらいで何をこんなに必死になっているんだと思われるかもしれない。
でも、普段は滅多に言わない拓斗のお願い事だから。
どうにかして叶えてあげたいって思うの。
こうなったら、何としてでも拓斗に自分からキスするんだ……!
うーん。だけど、どうしようか。
何か良い方法は……あっ、そうだ。



