「……俺にキスしてくれたら許してあげる」
えぇ!?
「たっ、拓斗にキス!? わたしが!?」
「うん。俺らがキスするときっていつも俺からで、今まで音寧から俺にキスしてくれたことってなかったでしょ?」
「そうだけど……」
どんなお願いかと思えば、まさかわたしからキスして欲しいだなんて……。
やだ。自分からするなんて、そんなの恥ずかしいよ。
ガタンと音がし、拓斗が席を立ったのだと分かった。
「ほら、音寧も立って?」
「ねぇ、座ってしようよ。立ったままだと、わたし多分届かないから……」
わたしは身長155cmと、決して高くはない。
反対に拓斗は、身長が180cmある。
25cmも身長差があるんだから、どう考えたって普通に立っていてわたしが拓斗の唇に届くはずがない。
「俺は、音寧に頑張って背伸びしてもらって、キスして欲しいんだけど……ダメ?」



