そして、放課後。
「あー、これだけやってもまだ半分だなんて。量が多すぎる」
「ほんと……やばい」
わたしと拓斗は、約束していたカフェでデート……ではなく。
教室でふたりで向かい合わせに座りながら、拓斗が谷山先生から出された数学の課題プリントに一緒に取り組んでいた。
これは本来は拓斗ではなく、教科書を忘れたわたしがやるべきことだから。
わたしも一緒に課題をやると、拓斗に申し出たんだ。
先ほどまでオレンジ色だったはずの空は、いつの間にか藍色に染まりつつある。
「ごめんね、拓斗……わたしが教科書を忘れたせいで、こんなことになってしまって」
明後日までにこの山のようにある数学の課題プリントを提出するようにと、拓斗が谷山先生に言われたので、今日の放課後にやらざるを得なくなってしまった。
「忘れたものは仕方ないけど、おかげで今日の放課後デート行けなくなっちゃったのがなぁ……俺めちゃくちゃ楽しみにしてたから」
拓斗、今日のデートそんなに楽しみにしていてくれたんだ。
嬉しい気持ちになるとともに、胸が痛む。
「ごめん、ごめんね……拓斗」
わたしは、ただただ謝ることしかできない。
「音寧が何度謝っても、許してあげない」



