「すいません、谷山先生。俺、今日教科書持ってくるの忘れちゃいました」
「何だと!? 杉山お前、さっき宿題をやってくるのを忘れたと言った上に、更には教科書まで忘れてくるなんて……」
谷山先生の眉間の皺が深くなる。
「いやーっ。俺、数学大好きで。谷山先生の授業、今日もめちゃくちゃ楽しみにしてたのに。俺ってば、うっかり忘れちゃってすみません」
「分かった、杉山……もういい。授業が終わったら、あとで職員室に来なさい。お前の大好きな数学の課題、たーくさん渡してやるから」
「……はいっ」
「それじゃあ、授業を始めるぞ」
そう言って谷山先生は、数学の授業を開始した。
拓斗、まさかわたしをかばってくれるなんて。
長いと有名なお説教はされずに済んで良かったけれど、わたしのせいで拓斗が課題を沢山出されるだなんて。申し訳なさすぎる。
拓斗……ごめんね。



