それは恐らく恋をしてる目だった。


「では、会議を始める。まず、自己紹介を頼む。
 俺は責任者を務める戸田だ、今後は気軽に苗字で呼んで良い。的確な指示も心掛ける」

厳しい顔付きに大人の色気が漂う上司が席に着く。
眉を寄せる顔や紙を捲る手に見とれていた。

「パタンナーの豆田よ。中身と外見が合わないけど、丁寧な仕事を心掛けてるわ。宜しく」

周りの視線など気にも留めていない。

「生産管理部、主任の戸塚です。今回は頼まれて来ました、宜しく御願いします」

声すら聞いて居ない雰囲気もある。

「生産部でデザイン担当の佐野玲奈です。美大の学びや入社後の経験を生かして企画を成功させます」

何処か耽々とした印象の在る人。

「・・・企画部の玉城です。上司の補佐を勤めさせて頂きますが、お役に立てる様に頑張ります」

誰が挨拶をしても視線は一点だけを眺めていた。

「今回の企画だが、大手企業から直々の依頼だ。以前に受けた他社の評判を踏まえて期待をされている。そこで各部署から人材を集めた、宜しく頼む」

「この企業は読者の年齢層も広いし、統計を見ても高く横這いで維持してる。これだと焦点を絞るのが難しいな・・・」

前を向く時や同僚の意見に頷く間さえも外さないまま。