マイケルは
工房の壁に掛けている、
大きな黒石板に白墨石で
ザーーっと、
自分の考えを箇条書きにした。

「今、ほとんどの魔充石の
使い方は単体能力を
発現させるだけになっている
のが主流でしょ?
きっと今回のエックレーシアで
発表されるモノも!
その応用ぐらいだと思う。」

マイケルがパンパンと
手を払いながら離れた。

┏━━━━━━━━━━━━━┓
①魔充石の今の使われ方
→能力のそのままの付加
=光や火を付ける、水を出す。
※但し、無から有を生み出す
自体がウーリウ島民の魔力と
して潜在的に持つ絶大資源。
┗━━━━━━━━━━━━━┛

黒石板に書いた始めの項目を
指したマイケルが、
ナジールとハーバナ、そして
リドへと視線を向ける。

「単体能力っていうけど、
具体的に言ってくれない?
まだピンとこないわ。
それにエックレーシアで
ウーリウ側から魔充石みたいな
画期的な材料を公開する事自体、
始まって以来の快挙なのよ?」

明るく発光する魔充電灯の下。
眉を上げて豪語する
リドの言葉に、
ナジールとハーバナも同調して
大きく頷いた。

3人の様子を予想していた様に
マイケルは笑顔で言葉を続ける。

「魔充石の使われ方って、
火を燃やす。光を灯す。
温かくする。っていうのを
単体でさせているだけよね?
それでも快挙になるって?」

マイケルが
水龍の骨を見つけるまでは、
魔力を持つウーリウ藩島民でも
生活は至って古典的だと
言わざるを得なかった。

魔力で火を出す事が出来ても、
其の火を種に
油を燃やし続けなければ
夜間の明かりにはならない。

どんなに魔力で水を出せても、
水桶に貯めて置かなければ
誰でもが水を使える訳でない。
藩島城ならば、
水の魔力持ちの使用人が
1日に1度は水張りをしている
といった具合だったのだ。

とにかく、
魔力を発動する人が居ても
持続は不可能。
それを補うには結局、
油や木材、といった
持続燃焼させるような
資源が必要で、
ウーリウ藩島のような島では
外部商人に頼ることになる。

(要は輸入関税が半端ないのよ。
だから海岸線には貧困の人間が
多くなるってことよね。
ほんと元世界と変わらない話
だわ。現に、あたしだって、
魚を捕るとかギルド仕事に、
海底ダンジョンで日銭稼ぎを
2年もしてきたわけだし、、)

「確かに水龍の骨が魔充石に
なった事でね、魔充石だけで
みんなの能力が発動できるのは
便利になったと思うのよ。」

「それだけでも凄いことなだ
けれどな。しかも子供も簡単に
道具がなく付加できるんだよ?」

ハーバナは、
ヤオが遊ぶナジールの試作品を
ヤオから受け取りながら
マイケルに、試作品の魔充石を
取り出して見せた。

其の魔充石に付加された魔力は
風の魔性質を持つ『念動』だ。

魔力は能力であり、
カフカス王領国民は遍く持つ。
しかし、1人に1つの魔性質。
火・水・風・土・光・闇なる
6つの性質の1つだけを持つのが
通常であり、
多数発現は魔力容量が多い貴族や
王族になる。

モケの潜水は一見すれば
『水』魔性質に思えるが、
実は動力の魔性質となる『風』。

ヤオやラジが持つ遠見や鑑定は
『闇』魔性質になる。

そして魔力を体系化し、
技能化したのが魔術にと成り、
広くは学院などで学び、
訓練をする事で習得していく。

「今年のエックレーシアは、
この付加された魔充石で充分
驚愕されるわよ!!だって、
光の魔充石1つであれば
いつでもランプが灯せるのよ!
水だって出し放題じゃない!」

興奮した声で今度はリドが、
ハーバナから魔充石を受ける。

「いや、さすがに出し放題は
無理だって。付加するヤツの
魔力量にもよるからさ。」

そんなリドに
ナジールが苦笑するのを見て、
マイケルは少し呆れた風に
リドに訊ねた。

「じゃあ、これまで
エックレーシアは他国からの
発明品とかの紹介ばかりが
主流だったってことなの?」

「そうね。ウーリウ側からは、
常に新しい能力人材の公開だった
からね。わたしが王都の支店で
する仕事も、ほとんどが魔法を
使える人材の斡旋になるわ。」

島という、
限られた土地でいうなれば
ウーリゥ藩島は資源が少なく、
設備を設置する場所も少ない。

リドの言葉は確かに
マイケルにも納得は出来る。

(実際、人そのものが資源って
いうやり方は華人や印度みたいな
人口過大な国でもあるものね。)

それでも
今までリド達が王都や他国に
斡旋してきた
『魔力持ちの人材派遣』や
聖地巡礼による観光だけに
島の経済を終わらせる気は、
マイケルには無い。

「例えば1つの魔充石じゃなくて
小さい魔充石に能力を付加
させたモノを複数足したら?
もしくは、日用品に魔充石を
入れ込むとどう?あと、
魔充石自体を、変幻させたりとか
出来る能力もあるんじゃない?」

マイケルは眼差しを引き締め、
黒石板に書いた
2つ目の項目を示しながら
改めて3人を見る。

┏━━━━━━━━━━━━━┓
②魔充石の可能を探る。
※石の大きさと付加容量。
※複数魔性質の付加。
※日用品への応用使用。
◯『闇』魔性質による魔充石
自体に変化をさせて材質に
┗━━━━━━━━━━━━━┛

(でも、あたしが次に魔充石に
求める可能はもっとある。
素材にもなり、動力にもなる
万能性質だよ!
元世界でいうなれば魔充石自体が
エネルギー源になって、
万能細胞みたいに、
あらゆる性質の材料になる
可能があるかどうか!!)

「だから藩島城で技術者をしてる
ハーバナを、ナジールに紹介を
してもらったんだよ。徹底的に
魔充石を解析して、能力付加の
可能性を探ってみたい。そして、
今回のエックレーシアで発表する
のは、水龍の骨の魔充石自体の
能力じゃなく応用製品にしたい。」

マイケルは
黒石板の最後の項目に
改めて大きく◯をつけた!!

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③魔充石の素材は秘匿。
※水龍の骨の乱獲や侵略を
防ぐためにも必要!!
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