私と翼だけの甘い想い出があんなにたくさんあったのに………

全部もてあそばれてただけだなんて………

そんなことないよね?

信じたいよ………

翼のことを信じたい………

でも………

だから早く私に会いに来てよ!

そしてちゃんと言って………

俺はキラリが好きだって………

今度は私も素直になるから………

今度こそ………きっと素直になって私も翼が大好きって言えるから………

そうだ………神社に行って神様にお願いしなくちゃ………


キラリはパッと立ち上がり、そして家の鍵をかけて小走りにいつもの神社に向かった。

そのすぐ後を、怪しい影が付いてきていたことにキラリは全く気付いていなかった。


丁度そのタイミングで、翼がキラリの家に到着した。
翼はキラリの家のインターホンを押してみたが全く反応が無い。


キラリのやつ……居ないのか……


翼に与えられた時間はあまりない。いつ父にバレて連れ戻されるかもしれないという焦りから、翼はいてもたってもいられず家の前をウロウロと歩き回る。


キラリ……伝えたいことがあるんだ。早く戻ってきてくれ………
俺のせいでお前を危険にさらしたくはない……
お前は………
俺にとって大切な存在なんだ………
今度こそ………今度こそ会えたならハッキリと言おう………


お前のことが………


好きなんだと………




~神社~



キラリは賽銭箱にお賽銭を投げ入れて神様に祈る。



神様………どうかお願いです………もう一度だけ翼に会わせて下さい。そして、私にチャンスを下さい。
翼にちゃんと私の気持ちを伝えるチャンスを………



その時、後ろから突然大きな怒声が聞こえてきた。


〝止めろ!〟


キラリはその声に驚いてビクッと飛び上がり、そして恐る恐る振り返った。


そこには、キラリから数歩離れたところに見知らぬ男が立っており、そしてその男の更に向こう側に知っている顔が見えた。

キラリはこの状況を飲み込めず、なぜ〝止めろ!〟という言葉が出たのか不思議に思っていた。


キラリ「あっ、あの時のフラップ・フリーリーのメンバーの人!」

キラリは奥の方に居る男に向かってそう言った。

手前に居る男がニヤリと笑って

男「何だよ、お前急に善人ぶる気かよ?」

男はそう言ってキラリの方へ振り返り

男「なぁ知ってるか?この男、あんたのことを騙してるんだぜ?ほんとは翼なんて全然知らないのさ。ある女に頼まれてあんたのことをメチャクチャにするために近付いただけなのさ!なのに、急に手のひら返したみたいに善人面しやがって!ほんとはお前もこの女に下心があるんだろ?」

謎の男「いい加減にしろ!その娘には何も罪は無いはずだ!お前も金もらったんならそれで十分だろ!」

男「いや、今回はこの女をちゃんと犯してやらないと報酬が貰えないんだよ。悪いがお前でも邪魔してもらっちゃ困るぜ!」

謎の男「それは、れっきとした犯罪なんだからな!わかってるのか!」

男「何だよ……サツにチクるつもりか?白けちまうなぁ……ま、いいや……また別の機会に……あっ、そうそう。お前が俺を邪魔したことは、歩実に報告しとくからな!」

男はニヤリと笑って謎の男に言った。



歩実?歩実って……まさかあの……

どういうこと?この二人はどういう関係?

私を騙すために歩実はこの二人を遣って………

結局全部嘘だったってこと?

やっぱり翼には会えないってこと?

キラリはまた悲しくなりその場にしゃがみこんで泣き出した。

男は白けたと言ってこの塲を立ち去る。
そして謎の男がキラリの側まで近寄って寄り添うように屈んだ。

謎の男「あの……騙してて申し訳ない……でも……お詫びのしるしに何か協力出来ることがあったら………って言ってもこんな俺のことを信用出来ないかもしれないけど……せめて、君の家まで送るよ……」

キラリは喪失感で男の言葉がほとんど耳に入って来ない。

キラリはいきなり謎の男の腕を掴んで

キラリ「翼はどこなの!!!どこに行けば翼に会えるの!!!ねぇ、教えて!!!翼に会わせて!!!」

キラリは泣き顔で顔をくしゃくしゃにして必死に訴える。

謎の男は困った顔で言葉に詰まる。




~キラリの家の前~


翼は既に30分以上待ったが、キラリが現れる気配が無いので、唯一の可能性を信じて例の神社へ向かうことにした。


そして急いで神社の方へ歩きだし、近くまで来たとき、運命のイタズラはこの二人をどこまでも嘲笑う。


このとき、キラリを乗せた車が翼のすぐ横を通り過ぎる。しかし、キラリはうつ向いて翼に気付くことが出来なかった。

一方翼は、父が持ってきた写真に写っていた男と、その車にキラリが乗っていたことに気付き大きなショックを受けていた。


キラリ………まさか………まさかお前………


翼は疑心暗鬼にとらわれ、茫然自失となってただ立ち尽くす事しか出来なかった。