「みつき。人の縁って 不思議だね。」

「どうしたの、急に?」

「うん…あの日、みつきが 熱を出さなかったら 今頃 理帆はいなかったんだって思って。」

仕事を終えて 保育園まで二人で 理帆を迎えに歩く道。

私が言うと 光毅は クスクスと笑った。


「んっ?」

「由紀乃さん、全然 気付かなかった?」

「何に?」

「俺、ずっと 由紀乃さんのこと 好きだったんだよ。」

「エーッ! まさか…嘘でしょう?」

「もう! やっぱり 何も 気付いてなかったんだね。」

光毅は 責めるような目で 私を見た。


「ごめん…だって。気付く訳ないわ。みつきにとって 私は 恋愛対象じゃないと 思っていたもの。」

「だから、由紀乃さんは 危ないんだよ。由紀乃さんのこと 狙っている人 たくさんいるのに。全然、意識してないんだから。俺、いつも ハラハラしてたんだよ。」

「そんなことないわよ。」

「いいけどね。もう 由紀乃さんは 俺のものだから。」

「うん…まあね。」

光毅は 出産後も 私を 女性として 扱ってくれるから。

私の方が 恥ずかしくなって 頬を染めてしまう。


「由紀乃さん、顔紅いよ。」

「ちょっと やめてよ、みつき。」

クスクス笑う 光毅の肩を 軽く 小突きながら。


これが 幸せじゃないなら

世界中に 幸せなんて どこにもないって 私は 思っていた。











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