一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

部屋中に強く漂うミントの香りに、アイスクリームに添えられたミントの葉。
……もしかして。

「これ、クロエさんが作ったんですか?」

「モヒート飲みたくて、ミント余ったから」

キッチンでライムを切りながら、クロエさんはそう答えた。

クロエさんはミントチョコが食べられない、と姫野さんは言っていた。
アイスクリームをジッと見ていると、クロエさんが「ミントチョコ、苦手だった?」と聞いた。

「ミントチョコは好きなんですけど…。
あれ?その事、クロエさんに言いました?」

「……初めてバーで会った時に、隣の席の人がグラスホッパーを注文してて」

「グラスホッパー?」

「ミントチョコ風味のカクテル。
それ見て言ってた」


ミントチョコはナナセちゃんを思い出す。

だからなんとなく、あれから食べる事を避けていた。
だけど、今日は食べたい。

これは自分だけに作ってくれたものだ。


「ありがとうございます。いただきます」

ミントチョコのアイスクリームは、口の中で優しく甘く、涼やかに溶けて広がった。
モヒートを作り終えたクロエさんがいつも通り目の前に座ると、苛立ちと安心が混ざった様な、おかしな感じがした。

「すごく美味しいです。
……クロエさんは食べないんですか?」

「後で食べる」

クロエさんは瞬きをした。

クロエさんは嘘を()くとき、(まばた)きをするんだな。
そう思いながら笑った。