「お客様?」

いつもとどこか違う雰囲気を屋敷全体から感じた。シェラの中に恐怖が募っていく。

応接室の前に立ったまま動けなくなってしまったシェラの代わりに使用人がドアをノックする。そして、ナターリアの返事が聞こえるとシェラは強引に部屋の中へと押し込められた。

「あら、噂通り美しいお嬢さんですこと」

「よかったなぁ、ライヴィス!」

部屋のソファには、真っ黒なタキシードとドレスを着た見知らぬ男女と痩せこけてそばかすだらけの顔のシェラより少し歳上と見られる男性が座っていた。そして、向かい側に置かれたソファには、ナターリアがニコニコと上機嫌な表情を浮かべている。その隣にはジュゼッペもいた。

「シェラ、何をしているの?早く座りなさい」

一度も向けられたことのない笑顔をナターリアに向けられ、嫌な予感を覚えながらシェラはナターリアの隣に座る。居心地が非常に悪い。そんな中、ナターリアが口を開いた。

「よかったわね、シェラ。こちらのライヴィスさんがあなたの旦那さんになるのよ」