ただ夢中でシェラは走った。行く当てなどどこにもない。この街にどこに何があるのかすらわからない。だが、あの屋敷から逃げ出したという喜びと興奮だけが体を動かしていた。

「ハァ……ハァ……ハァ……」

気が付けば、森の奥深くへとシェラは足を踏み込んでいた。日が高く登っているためか、森の木々の間からは木漏れ日が差し込んでいる。その美しさに見惚れながらシェラはその場に座り込んだ。足元には、柔らかな名前の知らない草が生えている。

ずっと足を止めることなく走ってきたせいか、座り込むと一気に疲れが込み上げてくる。体を横にすると、眠気までもが襲ってきた。

(どうせ、誰も追ってきていないわよね)

温かい日差しが差す中、シェラは目を閉じて意識を手放した。安心して眠りにつけるのは久しぶりな気がした。



シェラが目を覚ますと、体は柔らかな布団に包まれていた。外で眠ったはずなのに、ベッドの中で眠っている。そして、シェラのことを七人の男女が取り囲んでいた。