ライヴィスに手を掴まれ、無理やり抱き締められた。シェラの体にブワリと寒気が走り、咄嗟に胸板を押す。彼のつけている甘ったるい香水の香りが鼻腔内に入り込み、シェラは吐き気を催してしまう。

「ライヴィス様、は、離してください!!」

シェラは胸板を叩いて抵抗するものの、びくともしない。彼はただ「デュフデュフ」と笑っているだけだ。

「デュフ、き、君は、デュフ、生きている時も、こ、こんなに、美しい、デュフ。でも、し、死んだ後も、デュフ、き、綺麗、なんだろうね」

「死んだ後……?」

「お、俺、デュフ、き、君が生贄にされた後、デュフフ、き、君の死体、デュフ、か、買うことに、し、したんだ。綺麗な、デュフ、君を、デュフ、き、綺麗な、状態、で、デュフ、保管、デュフ、で、できるよう、にね」

シェラの心の中がスッと冷えていく。薄い氷のような心にヒビが入っていくのがわかった。もう、我慢の限界だった。

「離して、あんた気持ち悪いのよ!!」

足を踏み付け、シェラは窓から外へと飛び出す。庭を抜け、生まれてから一度も出たことのない外へと飛び出したのだった。