「そうだわ。シェラ、ライヴィスさんとお話をしていなさい。二人が話し合って決めるべきこともあるでしょうから」

ナターリアの言葉にライヴィスの両親たちは「そうだな」と頷く。シェラは「冗談じゃない」という言葉が飛び出してしまいそうだった。

シェラはこの屋敷の外から出たことはない。そのため、同い年ほどの異性の存在など見たことがなかった。いつか、こうなる日が来ることは何となく予想はしていたものの、初めて会う異性がこれではときめきを感じることは一ミリもないだろう。

「粗相のないようにね」

ナターリアたちはそう言い、応接室を出て行った。部屋に残されたシェラはライヴィスをチラリと見る。ライヴィスは変わらずニタニタと笑っている。

(こんな男と何を話せって言うの?)

この部屋を今すぐ飛び出したい衝動に駆られるものの、もしもこの婚約が破棄となればナターリアに何をされるかわからない。シェラは覚悟を決め、テーブルに置かれた紅茶を飲もうとした。刹那。

「シェラの手、す、すごく綺麗、綺麗だね。デュフ、デュフフフフフフフフフ」