死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる


「──エレノス、クローディア」

そこへ、今まさに話の中で名前が出ていた人が現れた。

ふたりは弾かれたように振り返り、すぐさま敬礼をする。他人の目がある公の場以外では堅苦しいことを嫌うルヴェルグは、周辺にエレノスとクローディアしかいないことを確認すると、歩きながら話を進めていく。

「これから少し話せるか? ローレンスとラインハルトもいる」

「わかりました。伺います」

ルヴェルグ直々に話がしたいと来たのは初めてのことだ。皇帝である彼は常に忙しく、何か用がある時は来て欲しいと連絡を寄越してくるというのに、一体何事だろうか。

一行は長い廊下を抜け、敷地内の移動用の馬車に乗り込むと、ルヴェルグの私的なスペースがある離宮へと着いた。その先にある広い部屋に入ると、そこにはローレンスとラインハルト、現宰相であるグロスター侯爵の姿があった。


──ウィルダン=グロスター。
帝国の二大公爵であるジェラール家とオルシェ家に次ぐ、侯爵の地位にあるグロスター家の当主でもある彼は、本と眼鏡を愛する変わり者宰相である。

これで全員が揃ったのか、ルヴェルグは室内をぐるりと見渡すと、シックな赤いソファに身を預けた。

「すまないな、忙しいというのに。皆の意見が聞きたくて集まってもらった」

「いえ、陛下のご命令とあらば」

グロスター宰相は指先で眼鏡を押し上げ、勝ち気に微笑むと、レンズの向こうにある眼を光らせた。