フェルナンドとの生活を思い出すだけで具合が悪くなりそうだったクローディアは、重苦しいため息を吐いた。そんなクローディアの横顔を見ていたリアンの頭にある事が過(よ)ぎる。

城下で出逢った時、自分を見て驚いたような顔をしていたこと。再会した建国際では、会いたくない人から逃げ出してきたと言っていたこと。そして──。


「ディアが言ってた会いたくない人って、あいつのこと?」

たった今、フェルナンドと会った時のあの表情は、怯えているのか、憎いのか、怖いのか、泣きたいのか──そのどれもが当て嵌まるような、そんな目で対峙していたのだ。 

「どうしてそう思ったの?」

自分と目を合わせることなくそう聞き返したクローディアを見て、リアンは確信した。

「…憎くてしょうがないって顔、してたから」

菫色の瞳が揺れる。その表情に一片落ちる暗い影を見逃すことなく気づいたリアンは、クローディアとフェルナンドの関係性について考えた。

フェルナンドは公務で度々近隣の国に行くことはあったが、帝国を訪れたのは今回が初めてのはずだった。

一方クローディアは深層の姫君として知られ、片手で数えるほどしか公の場に顔を出していないと聞いている。

そんな二人に接点などあったのだろうか。