「──リアンっ…!!」

目を醒ましたリアンの前にはクローディアがいた。共に踊った夜からどれくらいが経っているのだろうか。意識を取り戻したリアンを見るなり、クローディアは目を潤ませていた。

その後方にはアウストリア帝国の皇帝の弟であるエレノスとローレンスの姿もあった。豪華すぎる顔触れにリアンは体を起こして挨拶をしようと思ったが、脇腹に鈍痛が走り、思うように体が動かない。

「そのままで大丈夫ですよ。ヴァレリアン王子殿下」

無理に体を起こそうとしたリアンにエレノスはそのまま寝ているよう気遣うと、クローディアへと視線を動かした。

クローディアは今にも泣きそうな顔でリアンを見つめていた。

「……リアンは…」

リアンと呼んでいた少年は、本当は他国の王子だった。知らなかったとはいえ、愛称で呼び礼儀を欠くなど皇女失格だ。

どうして本当のことを教えてくれなかったのだろう、と責める資格はなかった。それはクローディアも同じで、自分の名はディアだと伝えてしまったから。

黙り込むクローディアとリアンを見て、エレノスはローレンスを連れて部屋を出て行った。

きっと二人きりで話したいことがあるはずだ。それは“ヴァレリアン”の名を出した時に、クローディアが驚いたような表情をしていたのを見れば分かることだった。