リアンはクローディアが泣いていることに気づくと、顔を隠すように被っていたフードを下ろし、その場で膝をついてクローディアの両頬に手を添える。そして顔を覗き込むと、じっとクローディアの目を見つめた。
「……酷い顔。何があったの?」
リアンの深い青色の瞳を見てフェルナンドを重ねてしまったクローディアは、ふいっと顔を逸らす。
「なんでもないわ、目に埃が入っただけよ」
嘘をつけ、とリアンは困ったように笑うと、クローディアの手を引いて人通りからは見えない場所へと連れて行った。
その手は驚くほど冷たかった。きっとホールの外に長い時間居たのだろう。畏まった服装を見れば、招待されて来た客だということは分かる。なのに何故、手が冷たくなるまで外にいたのだろうか。…フードを被ってまで。
気づけばクローディアは、フェルナンドではなくリアンのことを考えていた。
「…リアンは貴族の方だったの?」
リアンはクローディアの涙を拭いたハンカチを仕舞うと、そのまま手をポケットに突っ込んだ。そうして吸い込まれるように空を見上げ、眩しそうに目を細める。
「貴族ではないな」
貴族ではないのなら何なのだろう。見た目からして、同じ年頃であろうベルンハルトに比べると、上流階級の人間にしてはなんだか変わっている。
「俺のことなんてどうでもいいよ。…で、なんで泣いてたの?」
自分の話をするのが嫌いなのか、リアンはクローディアに話題を変える。そしてその隣に腰を下ろすと、赤くなった目元を痛ましげに見つめた。


