予想外の登場に驚いたクローディアは、ローレンスを見て目を大きくさせた。なんとローレンスが兄とお揃いの衣装を着ていたのである。

派手好きで独特な感性を持つローレンスは、何故そんな格好をしているのだと誰もが問いたくなるような服を好んで着ていた。

だから今日のためにエレノスが特別に手配させていた、兄妹でお揃いの衣装も着てはくれないだろうと思っていたのだ。
時が戻る前のこの日も、着てきてはくれなかったから。

「どうかな? せっかく兄上が贈ってくださったものだし、我が妹ともお揃いならばこれを着てエスコートしなければと思ったのだよ」

僕が着るには少々地味かもしれないがと言うと、ローレンスは照れ臭そうにクローディアに手を差し出した。

滅多にないローレンスからの誘いにクローディアは応じようとしたが、傍で見守っていたエレノスの手がローレンスを止める。

「残念だけどディアのエスコートは私だよ」

「なんだって!? ならば兄上、式典の後は代わってくれたまえ」

「それは構わないけれど、ディアに悪い虫がつかないようちゃんと見張るんだよ?」

「任せたまえ!」

悪い虫ってなんだろうとクローディアは首を傾げる。
迎えにきた二人の兄のやりとりに思わず笑ってしまったが、それ以上に嬉しいという気持ちが溢れていた。

あの頃は人前に顔を出すのを避けていたクローディアだが、公務は家族全員が揃う機会でもある。ホールにはあの男も来ているだろうが、久しく会っていないルヴェルグと会えるのを楽しみにしていたクローディアは、エレノスの手を取りゆっくりと歩き出した。