アルメリアはクローディアにとって、孤独と絶望に満ちていた王国で授かったたった一人の家族なのだ。ルヴェルグにエレノス、ローレンスら兄たちが自分のことを愛してくれたように、アルメリアのことも愛してあげたい。
生まれてからどれくらい経ってしまったのか分からないけれど、あの地獄のような場所から抜け出せたのだ。ここからまた始めよう。
そう決意し、クローディアは庭園の門を開け放ち、その先に飛び込んできた世界を見て息の仕方を忘れた。
「……どうしてここに…」
庭園はアルメリアの花で溢れていた。今が見頃なのか、満開に咲き誇っている。
クローディアはゆっくりと歩き出した。赤、白、桃色と何色かあるアルメリアの他にも様々な花が咲き乱れている庭園はとても美しかった。昔からよくここを訪れては、ローレンスとお茶を飲みながら色々な話をしてもらったものだ。
だけど、ここでアルメリアを見たのは初めてだった。まさかこんなにも植えられていたとは。
「──おや、ディアではないか。具合はもう大丈夫なのかい?」
懐かしい声に、クローディアは弾かれたように振り返った。そこにはローレンスが居た。花の手入れをしていたのか、ローレンスにしては地味な格好をしている。
「……っ、ろ、ローレンス兄様っ…」
「おわっ、ディ、ディア!?」
クローディアはローレンスに抱きついて、子供のように声を上げて泣き出した。
突然のことに──クローディアらしからぬ行動を見て驚いたローレンスは、どうしたらいいのかと慌てふためく。
ローレンスは兄弟で一番女性の扱いを知っているが、いつも淑やかで慎ましかった妹に飛びつかれるなり、大泣きをされている。この現状を理解することで精一杯だ。


