だから今は自分に出来ることをしようと思う。王太子であるフェルナンドではなく、自分を選んでくれたクローディアに恥じないように。家族として迎えてくれた義兄たちに、誇りに思ってもらえるように。
リアンはルヴェルグのように片膝をついてエレノスと目を合わせると、いつだって優しかった義兄の手に自分の手を重ねた。
「その黒装束を、俺に貸してくれませんか」
「……なぜ、これを…」
「必要なのです。俺が俺に出来ることをしに行くために」
頬を撫でるような優しい風が、リアンの髪を揺らした。その青い瞳に映っているのはエレノスだが、リアンはもっと遠くを見ているようだった。
エレノスは静かに息を吐くと、黒色のケープコートを脱いだ。膝下まである長さのこのコートは、フェルナンドから同志の証にと贈られたものだ。同じものを王国の王族も持っているという。
──ただひとり、リアンを除いて。
王族に生まれながら、王族として扱われず、フェルナンドの気分次第でいつ殺されるか分からなかった王子が、この黒装束を求めた。その道の先には何があると言うのか。
「俺の代わりに、ディアを助けに行ってくれませんか」
リアンは受け取ったコートを羽織りながらそう言った。
予想外のことを言われたエレノスはリアンを凝視した。
「ディアよりも、優先するべきことがあるのかい…?」
リアンは背を向けたまま頷くと、腰に剣を差した。それを抜いたところをエレノスはまだ見たことがない。


