今日も突如として皇女への祈りを捧げ始めたアンナを置いて部屋の奥へと向かったエレノスは、ドレッサーの前で何やら悩んでいる様子の妹・皇女クローディアに歩み寄った。

「おはよう、ディア。イヤリングが決まらないそうだね」

エレノスの来訪に、クローディアは(すみれ)色の瞳をぱっと輝かせた。

「ご機嫌よう、お兄様。…今日のドレスに合うイヤリングが決まらなくて」

そう言って、全身をエレノスに見せるためにくるりと回ったクローディアは、今日は薄紫色のドレスに身を包み、控えめな輝きを放つ銀色の花のネックレスを着けていた。

エレノスと同じ銀色の髪と菫色の瞳を持つクローディアは、年中縁談が絶えないほどの美少女であった。

「今日も可愛いよ、私のディア。イヤリングはこれにしよう」

エレノスはクローディアの手の甲にキスを落とすと、アクセサリーケースから二人の瞳と揃いの色のイヤリングを取り出し、クローディアの耳に着けた。

「さあ、エスコートさせておくれ」

差し出されたエレノスの手に、クローディアは満遍の笑みで手を重ねた。

まるで一枚の絵のように美しいこの兄妹の姿を垣間見るために、これから行われるお祭りで国民たちは席取り合戦をすることを、この美しい兄妹は知らない。