死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる

「……事故に巻き込まれたふたりは、無事なのですか…?」

(───っ!)

絞り出されたような声は、掠れていて、震えていた。それを聞いて、やはり兄はあの爆発事故とは無関係なのだとクローディアは確信する。

「………エレノス」

ルヴェルグは瞳を細め、エレノスを真っ直ぐに見つめている。

何かを抜かれたような表情でいるエレノスはゆらりと立ち上がると、覚束ない足取りで歩き出す。ふたりが互いに手を伸ばせば触れられる距離になった時、エレノスは膝から崩れ落ちた。

「クローディア、は…」

「エレノス」

「私の大切なあの子は、無事なのですかっ…!?」

エレノスの綺麗な顔が歪む。その両目からは悲しみの雫があふれ、大理石の床にぱたぱたと落ちていった。

「…おにいさま……」

クローディアは今すぐ飛んで行きたかったが、初めて見るエレノスの涙を前にしたら、足が動かなかった。

自分は無事で、こうして生きていると伝えたい。あの腕の中に飛び込んで、優しく頭を撫でてもらいたい。

だけど──。

「……そなたは、あの事故と無関係なのだな?」

確かめるような声音で、ルヴェルグはそう問いかけると、エレノスの肩にそっと触れた。