死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる

黒はオルヴィシアラ王国にとって慶事の色で、国民はおめでたい日にその色を身に纏う。反対の時は真っさらな雪色を。

ただ王家の人間は一年中黒い服を着ている。かつてクローディアが嫁いだ時もドレスは黒く、その後の生活でも就寝時以外では黒色を纏っていた。

だから変なのだ。帝国の皇族であるエレノスが、黒一色の姿でいることが。

「──皇帝陛下に拝謁致します。報せを受け、急ぎ帰国しましたが……遅くなり申し訳ございません」

「顔を上げよ、エレノス」

ホールの中央で交わされたやり取りは、いつもと変わらない光景だ。隣国に行っていたエレノスが、ルヴェルグに呼び戻されて帰国した。ただそれだけのことのように思えるが、エレノスの留守中に事件が起きた。

その事件への関与を、エレノスは疑われている。

「手紙にも書いたが、そなたを呼び戻したのは事故が起きたからだ。何者かによって孤児院が爆破され、クローディアとヴァレリアン殿下がそれに巻き込まれた。また、同日にローレンスが何者かに拉致され、行方知れずとなっている」

淡々とした口調でルヴェルグは告げた。

クローディアとリアンは無事で、既に城に帰還したことを言わなかったのは敢えてのことだろうか。

弾かれたように顔を上げたエレノスは、目を大きく見開いていた。