死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる

「十中八九ヴァレリアン殿下を狙っているだろうな。あの爆発が起きた時刻が、犯人の“予定通り”ならばの話だが」

犯人はリアンを葬るために、訪問先の孤児院で事故が起きるよう仕掛けた。それで間違いないとルヴェルグは考えているようだが、何かが引っ掛かるのか、その目は卓上の書類へ注がれたままだ。

「……こんな時、あの二人がいてくれたら、と思う」

ルヴェルグが言ったあの二人とは、もう二人の兄のことだ。穏やかで優しいエレノスと、変わり者だけれど頼もしいローレンス。家族であり忠臣でもあるふたりを、ルヴェルグは誰よりも信頼していることをクローディアは知っている。

「ルヴェルグ兄様…」

「……悪い。らしくもないことを言ったな」

ふ、と何かが抜かれたような、淋しげな表情で。静かに弱音をこぼしたルヴェルグは、ぽすりとソファに背を預けた。

怪我人が出る事故が起きただけでなく、家族の行方も分からなくなって。片腕であるエレノスも戻っていない今、ルヴェルグは身体を休めるどころか、気を張りっぱなしだっただろう。

それでも傍に居たくて、クローディアはルヴェルグの元に戻ってきたが──まだ何もできていない。

連日の疲労が溜まっているルヴェルグと、そんな兄を見て胸を痛めているクローディア。そんなふたりを見つめていたリアンが口を開こうとしたその時、部屋の扉が勢いよく叩かれた。

「……何用か」

ルヴェルグが弾かれたように立ち上がる。ラインハルトも行こうとしていたが、ルヴェルグはそのまま座っているよう手で合図をした。

この秘密の部屋の前まで来られる人間は限られている。今室内にいる面々と、エレノスとローレンス。そしてもう一人は──。

「──セヴィ。何事だ?」

──セヴィ・ハディエス。ルヴェルグの腹心である青年は、扉が開くと同時に跪き、声を上げた。

「──エレノス様がお戻りになられました」

その報せに、クローディアも立ち上がった。