半ば飛び出すようにして首都へと向かった二人が皇城に到着したのは、昼を回った頃だった。

「こ、皇女殿下っ!?」

「ヴァレリアン殿下ッ…!」

何の知らせもなくクローディアとリアンが城門に現れ、衛兵は固まった。

偶々見回りでその場に居合わせた騎士は二人が同じ馬に跨っていることに更に衝撃を受け、伝令を忘れ美しい皇女夫妻に見入っていた。

それはそうだ。今や世の注目の的である、美しい夫婦が突如目の前に現れたのだから。

「──皇女と私は皇宮に行く。皇帝陛下へ謁見の目通りを」

リアンは仕事を忘れている騎士を馬上から見下ろしながら、凛とした声でそう告げる。

「……はっ!」 

衛兵は深く敬礼を、塔の上から事を見ていた門番は門を開け、騎士は伝令の為に脱兎の如く駆け出す。威風堂々たる城への入り口の扉が開くと、リアンはクローディアに一声掛けてから馬の腹を蹴った。

一時はどうなることかと思ったが、こうして辿り着くことができ、クローディアはリアンの後ろで安堵の息を漏らした。


皇宮の入り口の長い階段の上では、たった今来たのか、肩で息をしているルヴェルグの姿があった。

「──クローディアッ!!!」

クローディアが馬から抱き下ろされると同時に、階段を駆け降りてきたルヴェルグは、クローディアとリアンを共に抱きしめた。