「──皇都に戻るだと? このような時に」

クローディアとリアンの決断に、セリエスはいい顔をしなかった。それはそうだ、ふたりを襲った爆発事故がただの事故だったのか、それとも事件だったのか分からないのだから。

そのうえローレンスの安否も分からない今、皇都に戻るのは危険だと判断するのは当たり前のことだ。

そんな祖父の考えを分かっていても、クローディアに“行かない”という選択肢はなかった。


「このような時だからこそ、戻りたいのです」


セリエスは灰色の目を細めながらクローディアを見遣った。

若くしてこの世を去ったセリエスの娘──ソフィアとクローディアは良く似た顔立ちだが、クローディアの瞳はルキウスに似ていた。その眼差しは一度決めた道は絶対に曲げない、意志の強さを放っている。


「ローレンス殿下の無事が分かるまで、或いはエレノスが何事もなく帰還するまで、ここに滞在するのが良いと私は思うのだがな」

「お兄様達がいない今、ルヴェルグ兄様は大変だと思うのです。私が戻ったところで、出来ることは少ないですが……家族として、お側に居たいのです」

「……そうか」


それでも行こうとするクローディアを止める権利を、セリエスは持たない。かつて反対を押し切って行ってしまった娘の姿をクローディアに重ねたセリエスは、その表情を柔らかにさせた。