「落ち着いてるわ。だから早く、お兄様が何を思っているのかを考えないと…」

「何を思っているかなんて、本人にしか分からないよ」

「でもっ……!」

話さなければ、分からないし、分かり合えない。そう身を以て知ったのは、リアンの存在がいたからなのだ。

推し黙るクローディアを見て、リアンは青色の瞳を揺らす。

「もしもセリエス様の言う通りだったとしても、あの国に行って得られる力なんて、ないに等しいよ」

オルヴィシアラ王国に軍事力はない。そもそも国軍がないのだ。先の大戦の時に、軍を解体する代わりに帝国の属国となるのを免れたのだから。

そんな国に行って、皇位を簒奪するから力を貸して欲しいと言ったところで、銀の剣も金の盾もない王国に何が出来ると言うのか。あそこには国教に盾突く者を取り締まる国教騎士団しかいない。

「じゃあ、どうしてお兄様は……」

「………ローレンス様が襲われたという場所で、王国の矢が見つかったって、言っていたよね」

淡々と、クローディアの続きの言葉を塞ぐように、リアンは呟いた。まだ安否が分からないもう一人の兄の名に、クローディアは睫毛を揺らす。

「もしもその主犯が、エレノス様だと仮定する。その意図は?」

「お兄様が、ローレンス兄様を……?」

「もしもの話だから。それで、皇位の簒奪を目論んでもいて、俺が居た孤児院を爆破したのもエレノス様だとしたら?」

クローディアは弾かれたように顔を上げると、首を何度も左右に振ってくしゃりと顔を歪めた。そんなはずはない、と。兄は絶対にそんなことをしないと。