死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる


「――――ッ!!」

ローレンスは弾かれたように飛び起きた。
全身の肌は粟立っているというのに、額にも背にもびっしりと冷や汗を掻いている。肩の辺りの傷がジクジクと痛み、思わず顔を顰める。

激しい動悸に呼吸は自然と荒くなり、ローレンスは目を大きく見開いたまま周囲を見回した。

「──目が覚めたかい? ローレンス」

まず目についたのは、よく見知った人の顔だった。白銀色の髪を後ろで一つに束ねているその人は、黒一色の格好をしている。

「…………兄上?」

「私だよ。ローレンス」

少し離れたところに立っているエレノスは、いつもと変わらない柔らかな笑みを浮かべている。だが、その距離感に違和感を覚えたローレンスは、自身の手が縛られていることに気づいて硬直した。

(……何故兄上は縛られている僕を、助けないんだ?)

どくどくと、心臓が脈を打つ音が酷く大きく聞こえる。

ローレンスは今、とても小さな部屋に居た。ベッド一つしか置けない広さの空間に、自分は縛られ転がされていて、それを見下ろすエレノスが目の前にいる。

「……兄上よ。状況が飲み込めないのだが」

「分からないのかい? 私の弟なのに」

ふふ、と笑うエレノスの目は笑っていない。黒一色しか纏っていない服装のせいか、とても冷たく見えた。