「……おじいさま…」
祖父・セリエスはゆっくりとした足取りで歩み寄ってくると、クローディアの頭を撫でた。懐かしむような眼差しでクローディアを上から下まで見ると、にっこりと笑う。
「大きくなったね。…あの子によく似ている」
あの子というのは、きっと母のことだろう。ソフィア皇妃のことを知る人は皆、クローディアと会うと同じことを言っていたから。
「私がお前と会ったのは、生まれた時と、ルキウス陛下が亡くなられた時だけでね。長く病を患っていて、結婚式に参加することができなかった」
「…そうだったのですね。お会いできて嬉しいです、お祖父様」
セリエスは頷くと、溢れんばかりの笑みを浮かべたまま、クローディアからリアンへと目を向けた。
リアンは緊張しているのか、強張った顔をしている。ぎこちない動きで深々と敬礼をすると、凛とした顔でセリエスを見つめていた。
本来ならば、リアンが首を垂れる必要はない。帝国の皇族であるリアンと、公爵家の人間であるセリエスとでは身分が違うのだから。
だが、この通された部屋にはとある物が飾られていた。そのことに気づいたリアンは、息をするように礼を尽くしていたのだ。
「お初にお目にかかります、セリエス様」
「……ヴァレリアン殿下、ですね?」
リアンが頷くと、セリエスは目元を綻ばせた。


