「ディアが心から愛する人に出逢えるまで、そばにいるって約束したけど」
リアンの声が濡れていることに気づいた時には、もう遅く。抱きしめていた腕はほどかれ、その両手は泣きじゃくるクローディアの両頬に添えられて。
「誰にも譲りたくないから、俺を選んで。クローディア」
その一言に、クローディアの嗚咽は止まらないものになった。
こんなに泣いたことなど、生まれてから一度もないだろう。何不自由のない世界で生まれ、家族にこの上なく愛され、とても大切にされて。辛くて悲しい記憶も片隅にあるけれど、それを包み込んでくれた温かい人に出逢えた。
クローディアは目元を乱暴に拭うと、今日も綺麗な青色の瞳を見つめて、目一杯笑った。
「あなたと一緒に、生きたいわ」
これからもずっと。自分に触れるのは、リアンだけがいい。そんな想いを込めて、リアンと同じように両手で頬に触れてみれば。
夜空よりも淡く、真昼の空よりも濃い──美しい色の瞳が揺らめき、無色透明な雫をこぼした。
「もう一度、約束をしよう」
クローディアの耳元に、リアンの唇が寄せられる。吐息とともに囁かれたのは、共に金色の麦畑を見た日に交わしたものは、また別のもので。それはとてもやさしくて、あまい響きを持った言の葉だった。


