死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる


菫色の瞳から、大粒の涙が玉のように頬を転がり落ちる。降り出した雨のように止まらないそれを、リアンは指先で優しく拭うと、クローディアの身体をぎゅうっと抱きしめた。

「……最初は、知りたいなんていう烏滸がましい気持ち、なかったんだよ」

「………、…っ」

「ディアと出逢う前の俺は、いつ殺されるのか…いつまで生きられるのか、分からなかった。だから、ディアとお城で会って、庇って怪我をした時……やっと死ねるって思った」

オルヴィシアラ王国の国教。それらが神と呼ぶ者の髪色を持って生まれたがために、酷い扱いを受けてきたというリアン。フェルナンドの気まぐれで連れて行かれたアウストリア帝国で、ふたりはまた出逢った。

「だけど、アイツがディアに近づくのを見た時……気づいたら身体が勝手に動いてて」

はらりと、肌を隠していた葉が下に落ちる。

「悲しそうな顔ばかりしてると思ったら、笑ったり、また泣きそうな顔したり…なんか目が離せなくなって」

優しい声音に、クローディアの中の何かが溶かされていくような気がした。それは二度目の人生を歩き出した時から、今日までずっと胸の奥深くにこびりついていたものだ。