死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる

「たぶんここはオルシェ公爵領だと思う。帝都とオルシェ公爵領の境目になってるリュミール川に飛び込んで、城とは真逆の岸に上がったから」

リュミール川は帝国一大きな川だ。首都の隣にあるオルシェ公爵領との境目で、オルシェ公爵領の向こうにはオルヴィシアラ王国がある。

伯父であるラインハルトは政務の為、帝都にある別邸で生活をしている。公爵領にある本邸を預かっているのは、次期当主であるベルンハルトと祖父母だろう。

「夜が明けたら、人を捜しに行こうと思う」

「…葉っぱ姿の私を置いて?」

「………葉っぱ姿にしたのはごめんだけど」

リアンはくすっと笑うと、クローディアの頬に手を添えた。その指先は熱く、触れられたところから溶けてしまいそうだ。

「リ、リアン……?」

美しい青い瞳が、未だかつてないほど近くにある。吐息がかかりそうな距離に、クローディアの心臓は忙しなく動き出した。

「……こんな時に言うのは、どうかと思ったんだけど」

リアンの指先は頬から首筋、肩へとゆっくりとなぞるように動くと、背で止まった。そうしておでこを合わせる。今度こそ息がかかる距離に、クローディアは口をぱくぱくとさせ、顔を真っ赤に染めた。

「──俺にも、ディアの痛みを分けて」

「リア──」

「嬉しい時も、悲しい時も、この命ある限り尽くさせて」

リアンはもう片方の手でクローディアの耳を撫でた。鼓動のひとつひとつすら、愛おしむように。

「──傍にいさせて」

その一言は、この上なく切なく奏でられた。