◆
「──やはり殿下の言葉は真実だったようです。晩餐会にてアルメリアの名を出したところ、クローディアの様子が変わりました」
時は少し遡ること、昼過ぎ。リアンが邸を出て行ったのを見届けたエレノスは、別室で控えてもらっていたフェルナンドの下に行った。
信じ難いことが真実であることを知ったエレノスは、早々に人を送ってフェルナンドを私邸に招いたのだが、いざ話をしようとしたタイミングでリアンが訪ねてきたのだ。
「嗚呼、やはりクローディアも私と同じく、二度目の生をっ…。なのに、私のことを誤解したまま、悍ましい罪を犯した男を選ぶとはっ……」
「フェルナンド殿下…」
うう、と泣くフェルナンドはハンカチで目元を押さえながら、縋るような目でエレノスを見る。リアンとはまた違った魅力を持つ青色の瞳からは、大粒の涙が惜しげもなく転がり落ちていた。
「アルメリアは、クローディアと貴方様と同じ銀色の髪と菫色の瞳を持つ、玉のように美しい御子でしたっ…」
エレノスは大きく目を見開いた。子の名前であることは聞いていたが、オルシェの血筋を色濃く引いた容姿だったとは。
「貴方様にも、抱いて頂きたかったっ……」
さぞかし可愛い子だったのだろうな、と思う。
泣き崩れるフェルナンドの背を摩りながら、エレノスは瞼を下ろした。
やはり今からでも、クローディアとヴァレリアンの婚姻を無効にするべきだろうか。だがそれをする大義名分がない。
まずはクローディアのフェルナンドへの誤解を解くのが先だろう。愛しい妹は美しい王子に騙されているのだろうから。
(──ディアを失うわけには、いかない)
殺される前に、手を打たなければ。
あの美しい王子を、妹から引き離さなければ。
そう心に決めたエレノスは長い髪を束ねると、フェルナンドに手を差し伸べた。
「──やはり殿下の言葉は真実だったようです。晩餐会にてアルメリアの名を出したところ、クローディアの様子が変わりました」
時は少し遡ること、昼過ぎ。リアンが邸を出て行ったのを見届けたエレノスは、別室で控えてもらっていたフェルナンドの下に行った。
信じ難いことが真実であることを知ったエレノスは、早々に人を送ってフェルナンドを私邸に招いたのだが、いざ話をしようとしたタイミングでリアンが訪ねてきたのだ。
「嗚呼、やはりクローディアも私と同じく、二度目の生をっ…。なのに、私のことを誤解したまま、悍ましい罪を犯した男を選ぶとはっ……」
「フェルナンド殿下…」
うう、と泣くフェルナンドはハンカチで目元を押さえながら、縋るような目でエレノスを見る。リアンとはまた違った魅力を持つ青色の瞳からは、大粒の涙が惜しげもなく転がり落ちていた。
「アルメリアは、クローディアと貴方様と同じ銀色の髪と菫色の瞳を持つ、玉のように美しい御子でしたっ…」
エレノスは大きく目を見開いた。子の名前であることは聞いていたが、オルシェの血筋を色濃く引いた容姿だったとは。
「貴方様にも、抱いて頂きたかったっ……」
さぞかし可愛い子だったのだろうな、と思う。
泣き崩れるフェルナンドの背を摩りながら、エレノスは瞼を下ろした。
やはり今からでも、クローディアとヴァレリアンの婚姻を無効にするべきだろうか。だがそれをする大義名分がない。
まずはクローディアのフェルナンドへの誤解を解くのが先だろう。愛しい妹は美しい王子に騙されているのだろうから。
(──ディアを失うわけには、いかない)
殺される前に、手を打たなければ。
あの美しい王子を、妹から引き離さなければ。
そう心に決めたエレノスは長い髪を束ねると、フェルナンドに手を差し伸べた。


