その晩、いつものように二人は同じベッドに入ったが、横になったのはクローディアだけだった。上半身を起こしたまま、何か思い詰めたような顔をしているリアンを見て、クローディアも体を起こす。

「リアン、どうかしたの?」

リアンはゆっくりとクローディアを見ると、小さく頷いた。

「聞きたいことがあるんだけど、いい?」 

なあに、と首を傾げるクローディアを見つめるリアンの瞳は、蝋燭の火で艶やかに揺らめいていた。

「……答えるのが嫌だったら、無視して寝て欲しい」

自分の性格上それは無理だとクローディアは笑ったが、リアンがにこりともしないどころか、いつになく真剣な顔をしているのを見て、クローディアは口を閉ざした。

リアンは酷くゆっくりとした動きでクローディアの指先を握ると、ぐっと顔を近づけて唇を開いた。

「アルメリアは、人の名前だったりする?」

「──っ!」

なぜ、そんなことを訊いてくるのだろう。そう問いかけたかったが、唇が震えて声が出なかった。

そんなクローディアを見て、リアンは顔を歪める。

「その反応からして、間違ってなさそうだね」

クローディアは必死に首を横に振ったが、それを止めるように、リアンの手のひらが頬に添えられる。そうして向けられた微笑みは、枯れる花のように儚げで、とても悲しそうで。

「──もう逢えない人、なんだね」

そう告げたリアンの声は掠れていて、泣き出しそうだった。

はたり、と。シーツの上に水滴が落ちる。クローディアの瞳からこぼれ落ちたそれは、次々と下へと降っていった。

それが涙で、自分は泣いているのだと気づいた時にはもう遅く、啖呵を切ったようにあふれていた。