「……俺、そんなに頼りない?」
違う、とクローディアは首を横に振った。まだ目を合わせられないでいるクローディアの手に、リアンの手が重ねられる。その温もりからは、ただ純粋にクローディアのことを心配しているリアンの想いが伝わってきた。
だがその優しさは、今のクローディアにとって辛かった。傷口を水に浸した時のような痛みを感じてしまうのだ。
「…誰にだって、誰にも言えないことはある。でも、言えずにいて苦しいのなら、打ち明けてほしい」
「…リアン……」
「俺には、言えないこと?」
その問いかけに答えるために、クローディアは顔を上げた。そうして深い青色の瞳を見つめ返すと、小さく頷く。
「……言えないわ。ごめんなさい」
これはリアンだけに言えないことではないのだ。愛する兄たちにも、この世の誰にも言えないこと。
あの花の名が、時が巻き戻る前の自分の子と同じものであるからなんて、誰にも言えないことなのだ。
「そう、分かった」
リアンはクローディアがようやく目を合わせてくれたことに安堵したのか、そっとクローディアから手を離すと、静かに部屋を出て行った。
扉が閉まり、一人きりになると、クローディアは深いため息を吐いた。
いつか、あの花を、あの花の名を──特別に想っている理由を、誰かに言える日は来るのだろうか。


